国立医学部をAO入試で突破する力

投稿日時:2018/11/14(水) 11:07

ほぼ毎日お弁当持参で勉強に来ていたAさんが自習室を退会されるという。
大学受験にしてはご退会が早いな、どうしたのだろうと思っていた。
聞けば、AO入試で合格が決まったというのだ。しかも難関の国立大学医学部だと言う。

医学部でAO入試と聞いて正直ピンとこなかった。私が不勉強なだけなのだろうが、「確か一芸入試じゃなかったかな。医学部入試で一芸とはどんなことが問われるのだろう?」ぐらいのイメージしかわかなかった。

そこでさっそくAO入試をググると「大学入試方法のひとつ。大学の入学管理局による選考基準に基づいて、学力試験を課さず、高等学校における成績や小論文、面接などで人物を評価し、入学の可否を判断する選抜制度。米国で経費節減と効率性を目的として制定され、日本では1990年に慶応義塾大学が導入し、各大学に拡充している。」(ウイキペディア)

ますますイメージがわかなくなったのでご本人に直接どんな入試か聞いてみた。
一次試験は通常の学科試験があり、二次試験でグループ討論と面接があるのだという。
学科試験を課しているところはウイキペディアの定義とは少し異なっているようだ。

二次試験に進むことができるのは難関の一次の学科試験を突破した人のみだ。
浪人したAさんの一次の学科試験対策は、自習室での自習中心だったという。実際に自習室には毎日熱心にかよわれていた。週に1回だけ予備校で単科を取っていたが、予備校の総合科に通わなかった理由は、「自分で出来る科目は予備校の授業を受ける意味がない」という考え方からであった。

二次のグループ討論は、病気の「症例」が示されてそれについて議論するものだという。但し大学の図書館を使って調べてもいいらしい。ほぼ1日がかりだったという話だ。

高校三年生や一浪生に、学校の授業ではもちろん習っていないであろう「症例」を示すとは!「早すぎないか!」
最初は聞いて驚いたが、次第にいいかもしれないと思い始めた。

医者は、人の命を救うという特別な職業であり、実践的な適性が切実に問われる職業であると思う。
「症例」について分析し、議論するという作業は、かなり直接的な形で医師としての実践的適性を総合的にみることができるように思える。分析する力、考える力、話を聞く力、説明する力、説得する力、協力する力、場合によれば人間性などより多面的な適性、能力を。

またそもそも医者を志す人は、その覚悟を決めた時点で医師になる準備を既に始めているような気がする(Aさんもどこか医師顔を漂わせていた)。だから存外「症例」というテーマも早すぎるということはないのではないか。

Aさん本人にお話をうかがっていると、説明に骨太の論理性があり、わかりやすく、こちらの知りたいポイントをついていた。加えて終始生き生きとした自然な暖かな笑顔で話をしてくれて、こういう人が医師であったら確かに患者に説得力のある説明がなされ、信頼関係が生まれやすいのではないかと思わせた。採点基準を知っているわけではないが、Aさんが二次試験を突破されたのもうなずけた。

インフォームドコンセントが1997年に医療法改正の形で法制化され、医療の現場においては医師が患者にわかりやすく治療について説明をし、患者が十分に理解したうえで合意することが求められている。これには単なる医学的知識のみならずコミュニケーション能力、相手を納得させる人間的な包容力などの力も必要となってこよう。
患者と医師とのよりよい関係のあり方が問われている中で、医師としての総合的な適性をみるうえで、こうしたスタイルの「AO入試」は有効なのではないか。